私たちの、日々の食卓に欠かせないパンや麺類、菓子など、様々な食品に利用される小麦。
日本へは、カナダや豪州、米国から年間約488万トンが輸入されています。その中で米国産小麦は、強力粉として使用される「ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)」と準強力粉としての「ハード・レッド・ウィンター(HRW)」、薄力としての「ウェスタン・ホワイト(WW)」が日本に約242万トンが輸入されています。
日本に輸入された米国産小麦は、安定供給と高品質で日本の食卓での重要な役割を担っています。
本稿では、米国産小麦の持続可能な生産について紹介します。
日本が輸入している米国産小麦の品種
●ウェスタン・ホワイト(WW)
ソフト・ホワイト(SW)小麦にサブクラスのホワイト・クラブ(WC)小麦を20%以上ブレンドしたもの。タンパク質10.5%以下。主にタンパク値が6.5~9.0%の小麦粉で使用されており、年間67万トンが輸入されいる。
●ハード・レッド・ウィンター(HRW)
硬質赤色冬小麦でタンパク値11.5%以上。主にタンパク値10.5~12.5%の小麦粉で使用されており、年間85万トンが輸入されている。
●ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)
硬質春小麦(HRS)小麦のサブクラス、硝子質粒率 25-75%のノーザン・スプリング、及び 同75%以上のダーク・ノーザン・スプリング。タンパク質14%以上。主にタンパク値11.5~13.0%の小麦粉に使用されており、年間90万トンが輸入される。
米国小麦生産を支えるアメリカ合衆国小麦連合会(USWA)
アメリカ合衆国 小麦生産者及び米国農務省から拠出された資金をもとに、米国産小麦の輸出振興を目的とする組織です。また、米国産小麦は、米国内生産量の約50%が100カ国を超える外国に輸出されており、その振興、市場開拓を行う為に、日本他アジア地域を含め世界の 13カ国、15箇所に事務所を構えています。
全米50州の内、小麦生産州37州。その内 17州が主な生産地となり、米国産小麦生産量80%をカバーしている。また、17州のそれぞれにUSWAの協力団体として、小麦委員会が設置されています。これらの委員会は、生産者と連携し、小麦の生産振興、品質向上、市場への安定供給を目的とした活動を行っています。
- 研究開発:各州の気候や土壌に適した品種の開発を支援。
- 技術指導:生産者に対し、最新の栽培技術や病害虫対策に関する情報を提供。
- マーケティング: 米国産小麦の魅力を国内外に発信し、需要拡大を促進。
これらの活動は、持続可能な農業を推進し、高品質な小麦を消費者に届けるための重要な基盤となっています。
環境負荷を低減する持続可能な農業への取り組み
近年、環境への配慮は農業においても重要な課題となっています。
USWAは米国の小麦生産者を代表し、SDGsや気候変動問題と向き合い、小麦の持続可能(サステナビリティ)な生産を推奨し、様々な取り組みが行われています。
- 不耕起栽培:土壌を耕さず、そのまま播種。土壌侵食防止、生物多様性・有機物の保全、農作業の省力化、燃料削減効果あり。全米の小麦作付面積の約7割において導入。
- カバークロップ: 土壌侵食を防ぎ、土壌中に有機物を加え、土壌改良。
- 家畜肥育との組合せで、化学肥料の使用量の低減
- 土壌水分の有効活用
- ハイテクを利用した精密農業 :肥料、或いは農薬が必要な部分をピンポイントで判別し、肥料/農薬のコストを低減。
これらの取り組みは、環境負荷を低減するだけでなく、次世代へ健全な農地を引き継ぐという生産者の想いでもあります。
そして、米国の小麦生産者が次世代に対し、農地を守り引継ぐ責務を負い、土地と天然資源を管理
運営する手法について、その現状を説明する動画も公開されています。
米国産小麦:食卓への約束
私たちの食卓に欠かせないパンや麺、菓子などを支えている米国産小麦。
日々、何気なく手に取っている食品の背後には、広大な農地での栽培や、持続可能な農業への取り組み、そして安定した品質と供給体制があります。小麦はただの「原料」ではなく、人と自然、産地と食卓をつなぐ橋渡しの存在。
その背景を知ることは、より良い原材料選び、そして持続可能な食の未来への一歩となるのではないでしょうか。